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着物素材事典
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9 上布

 上布というのは元来が献上布、あるいは上納布といった意味で生まれたものである。宮古上布、八重山上布、奈良上布、近江上布、越後上布、能登上布、などがあげられ、いずれも産地の名称がつけられて、それぞれ郷土色の濃いものが織られてきた。

 本来は苧麻(別名からむし)という麻が使われていた。苧麻は大麻に比べて練維が細く、薄い布地に練り上げることができる。

 大麻を使ったものはおもに庶民の衣料に使われ、苧麻を使ったものは上層階級の人びとに着用され、そのなかでもとくに上質のものが献上布に選ばれて、限られた人びとにもちいられた。明治以降は名称の範囲が広がり、麻以外でも、薄手のやや固い風合いの夏物着尺にも「上布」の名称が用いられている。

 麻から糸をとる作業は、網やもめんのように紡ぐとはいわずに績むといい、この仕事をする人を績み子と呼んでいる。績み子は麻の繊維を爪の先で幾筋にも幾筋にも裂いて、細い糸をつくる。
糸を裂きやすくするために麻の繊維を絶えずロにくわ点て唾液を含ませ、麻の繊維に水分を与える。

 江戸時代、越後の上布産地の女性は、糸がよごれないように、当時の風習であった「お歯黒」をせず、白歯であったことが文献に見られる。

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